ちいさな洞窟

娘との日々

坂道のある公園

今日も公園の話をしましょう。

 

ふたりで毎週のように出かけた公園のひとつに宝来公園があります。

田園調布駅から、いちょうの並木道を歩いて5分くらいのところにある、

背の高い樹木に覆われた公園です。

お母さんや、ばぁば、お友だちのHちゃんといっしょに来たこともあります。

 

公園を入って遊具のあるところまでは下り坂になっているので、

よく、その階段をふたりで競争しながら、勢いよく降りていきましたね。

 

ところで、そうやって勢いよく走って下っていくようなとき、

あなたは転んだことがあったかな。

あまり転ぶところを見ていない気がします。

 

いちど多摩動物公園で、急な下り坂を相当な勢いで走って行ってしまい、

追いかけたことがあります。追いかけながら、ぼくは焦ってヒヤヒヤしました。

そのときもあなたは転ばずに平然としていたね。

ちーちゃんは足が丈夫で、ずいぶんとバランスがよいんだなと感心しました。

 

 

さて、宝来公園の下り坂の途中、噴水のある場所では、

いつ来ても、おじいさんがひとり、太極拳をもくもくと練習していました。

あなたもその体操をみて「たいきょくけん」と呼んでいましたよ。

 

階段を降りきると、まずブランコや、すべり台(2列の)があり、

奥には池があって、亀や鯉がたくさん棲んでいました。

元気のよいアヒルも一羽、棲んでいました

(いつの間にかいなくなってしまったけど)。

 

水鳥もたくさんいて、あなたがまだ歩き始めて間もないころに、

陸に上がってきた鴨のつがいと追いかけっこをしたこともありました。

 

その辺に落ちている手ごろな小枝を拾ってきて、あんぱんまんとバイキンマンの絵を、

砂利の敷かれた地面に一緒に描いて楽しんだ時期もあります。

使った小枝は、時計台に隠して、また次に来たときに使いました。

 

この公園は夏になると蚊が大発生するのですが、刺されるのはたいてい僕のほう。

あなたはあまり刺されない質のようですね。

 

そういえば、ちーちゃんは蚊のことをずっと「カガ」と呼んでいました。

それは、お母さんやぼくが家などで蚊をみつけると、

「かがいる! かが! かが!」

などと叫んでいたからです。

それを聞いたちーちゃんは、蚊のことを「かが」という虫だと思ったんですね。

 

おそらく3歳ころまでは、「カガ」と呼んでいました。

そういった間違いも、なんだか、かわいいので、

「直せないよね」とお母さんと言っていたものです。

 

「スパゲッティ」のことを「スタベッキー」 と呼んでいたことも、

やはり、かわいいので、直せなかった。

もしかしたら4歳になってからも「スタベッキー」と言っていたかも。

 

さて通い続けたこの公園は、あなたの成長に気づかされる場所でもありました。

 

すべり台の階段をはじめは登れず、手をつないで支えました。

ひとりで滑るのを怖がるあなたを膝にのせて何度も滑り降りました。

 

ブランコにはひとりで座れず、椅子に、よいせっと乗せました。

ひとりで乗れるようになっても、自分では動かせず、背中を押しました。

 

「イチ、ニ、サン、シー、ゴー…」。

背中を押すとき、ぼくは数を大きな声でかぞえて、こっそりと心のなかで、

数字を覚えてくれたらいいなあ、なんて思っていたものです。

 

大きくなってくると、ぼくが「何回、押そうか?」と聞くと、

「10かい、おして!」などと応えましたね。

 

でも、いつの間にか、すべり台はひとりで滑って、

ブランコもひとりで上手に乗れるようになりました。

立ち乗りをはじめたころは、落ちてしまうかもと思って、ヒヤヒヤしましたけどね。

 

そういえば、いちど、目黒不動尊の裏手にある公園のブランコから

派手に落ちたことがありました。

落ちたあと、その場に倒れたまま泣きだすちーちゃんに向けて、

勢いよく戻ってきたブランコの椅子がぶつかりそうになった。

その瞬間、すぐ隣にいたおばさんが椅子を手で止めてくれて助かりました。

あやうく椅子に頭を打って、けがをするところでした。

「あぶなかった~」、ぼくは冷や汗をかいたものです。

 

さて、ブランコでは、あたなは順番を守って、

つぎに待つ子にしっかり替わってあげていました。

絵本の『ノンタン ぶらんこ のせて』を読んでいたからかな?

ブランコの順番を替わらないノンタンはいじわるだって知っていたからね。

 

行動範囲が広がってくると、宝来公園からさらに東に進んで、

今度は急な登り坂を上がり切ったところにある

多摩川台公園に足を延ばしました。

この公園のことは、また改めてお話ししましょうね。