ちいさな洞窟

娘との日々

短い散歩

ちーちゃんが生まれてから幼稚園に入園する前にかけての間、

平日の夕方、ふたりでよく短い散歩に出かけました。

 

ぼくが会社から帰宅する時間はだいたい午後5時すぎ。

春や夏はまだ明るく、昼間より涼しいので、

蚊さえ気にしなければ、ゆるゆると歩く近所の散歩は平和そのもの。

とてもたのしい時間でした。

 

町内に小さな公園がふたつあり、そこをハシゴして、遊んだり、

近くの高校まで歩いていって、校舎わきの街路樹の下に住んでいる

猫たちにあいさつしたりしました。

その校舎が建て替えられてから、猫たちは引っ越しをしたのか、

同じ場所では見なくなりました。また会えるといいな。

(代わりに、散歩中の犬にあいさつしましたね。) 

 

スーパーやコンビニでちょっとした買い物をしたり、

歩道橋を渡って、駅ナカの本屋に立ち読みに行ったこともあったね。

 

神社やお稲荷様に、あなたが「いつもありがとうございます」と

お礼を伝えにいくこともありました。

酒屋のそばにある、狐が出迎える小さなお稲荷様を覚えているかな?

「これからもよろしくお願いします」って、ちーちゃんは拝んでいたよ。

(大丈夫。ちーちゃんは神様に守られています。)

 

あなたが1歳か、せいぜい2歳になりたてのころだと思うけど、

夕方のタイヤ公園に行ったとき、こわい思いをしました。

ふたりで手をつないで歩いていたはずが、

公園にほぼ着いたことでぼくの気が緩んでしまい、

ふと見ると、あなたは道路の真ん中にひとり立っていたのです。

 

なんで道路の真ん中で立っているんだ!

と、ぼくは目の前で起きていることが信じられず、

あなたに急いで駆け寄って抱きかかえ、公園に戻りました。

 

あたりはすでに薄暗くなっています。

その道、たぶん幅が4~5メートルの道は、

ときどき、スピードを出す車や自転車も走っているのです。

ぼくは冷や汗をかきました。

 

まだ小さなちーちゃんの安全を守るのは僕の務め。

これからは目を離しては絶対にだめだ。

そう誓いました。

 

あの日、車や自転車が走っていなくて本当によかった。

いま思い出してもゾッとします。

そのとき、お母さんにはこの話ができませんでした。

もしかしたら、このエピソードをまだ言っていないかもしれません。

知っているかどうか、こんど聞いてみてね。