ちいさな洞窟

娘との日々

野鳥のダンス

2019年8月16日、台風はすでに去っていましたが、

恵比寿には、なお、強い風が吹いていました。

ちーちゃんの黄色い帽子が

風で飛びそうなほどの強い風です。

 

その日は恵比寿の高層ビルのなかにある

東京都写真美術館にともに出かけ、

嶋田忠写真展「野生の瞬間」を鑑賞しました。

 

鑑賞前の腹ごしらえに、

美術館の手前にあるエクセルシオールカフェ

あなたはパニーニを食べたと記憶しています。

 

とても刺激的な、南国ニューギニアの野鳥を

題材にした写真展でした。

ニューギニアの野鳥の美しさには

目を見張るものがあります。

あなたも魅入られ、

ほぼ半日をその写真美術館で過ごしました。

 

写真だけでなく映像展示もありましたね。

 

その映像に、おどろきました。

ニューギニアのカラフルな鳥たちは

求愛ダンスをするための舞台「あずまや」を

なんと自らつくるのです。

かしこく、器用な鳥たち。

枝を積みあげたアーチ状のステージは、

とても凝った作りでした。

 

その、あずまやのなかで、野鳥が踊ります。

なかでもオウゴンフウチョウモドキの

求愛ダンスのユニークさには、

ふたりで虜になりました。

 

鳥は目を見開いて、炎のような体を

ゆっくり大きくふくらませたあと、

羽を震わせながら、いっきに縮んでいく。

 

鳥があれほど素晴らしいダンスをするなんて、

おどろきだったよね。

この鳥たちは、若いころから

大人の鳥のダンスを見て学ぶと

解説されていました。

鳥もダンスを練習するんですね!

 

ところでふたりでソファに座って

鳥のダンスの映像作品を観ているとき、

ずっとあなたの隣に、

この写真展を開いた

写真家の嶋田さんが座っていたんだよ。

(ぼくはそのとき何も言わなかったけれど。)

 

もしかしたら写真家さんは

「熱心に鑑賞するちびっ子がいるなあ」と

感心していたのかもしれませんね。

 

帰りがけにその会場の販売所で、

野生動物に取材した自然番組『WILD LIFE』の

DVDを買ってほしいとあなたにせがまれました。

 

DVD、いいね。たのしそう。

そう思いましたが、意外に値段が高い。

家に帰って、もっと安そうなものを探そう、

などと言ってその場では買いませんでした。

『WILD LIFE』はこんど買います。

いっしょに観ようね。

 

さてその日以降、ぼくは家で何度か、

あなたの前で、オウゴンフウチョウモドキの

求愛ダンスの真似をしてみせました。

 

目を見開いて鳥の表情を作り、

体を大きく拡げると、

腕を振りながら、すぐにしぼませました。

 

そのたびに「ちがう。そうじゃない」

と、あなたからダメ出しをもらってしまいました。

けっこう似ていると思ったのだけど…。

 

ちーちゃんはいったん演出家モードに入ると、

割とこまかく指導するタイプですね。

観察力はさすがだと思います。

(おままごとで発揮されるちーちゃんの演出力のお話はまた次回。)