ちいさな洞窟

娘との日々

おはしの練習

10年以上前、友人を訪ねて3週間、ベルリンを旅行したときのことです。レストランでおはしを使ってご飯を食べていたところ、一緒に食事をしていたドイツ人やハンガリー人たちから珍しそうに眺められ、「器用だね」と言われました。
 
彼らがおはしを使わない文化にいることは知っていましたが、おはしを使えることが「器用なこと」=特別なこと、だと言われたことが印象に残っています。それまで、おはしを使うことは誰でもできる、当たり前のことだと思っていた気がします。でもそうではないことに実際に気がつきました。自然に使えるわけではなく、練習を積んで、徐々に使えるようになるもののようなのです。
 
思い返すと、ぼくは意識的におはしを練習した記憶はありません。家庭や幼稚園、学校で、見よう見まねで少しずつ持ち方を覚えていったのでしょうか。あるときは、ばぁばがぼくの手を取って教えてくれたこともあるかもしれません。
 
いずれにせよ、おはしを使う環境や文化のもとにいるおかげで、その持ち方を学ぶ機会が多く与えられていたのです。それが自然にできるようになったように見えるのは、ぼくが日本に住んでいるからなんですね。
 
さて、ちーちゃんの好奇心の高まりにあわせて、2016年10月、おはしの練習を始めてみました。そのときには、スプーンで鉛筆持ちができるようになっていましたし、フォークも上手に使えました。練習といっても、まずは、おはしを食卓に存在させることから始めました。おはしを食卓に置き、それから、あなたの気が向けば、おはしを持つなどして、慣れることからです。
 
ただ、これは長く続かなかったと記憶しています。なぜかというと、おはしを持つには、まだ指のちからが足りなかったからです。おはしを持つ手前に、ワンクッション、ほかの手順が必要でした。そこで、まずはエンピツを使って運筆ができるようにがんばってみようと考えました。運筆で指のちからをつければ、おはしを持つちからもつくはずです。そういえば、エンピツで字や絵を描くときも、筆圧がまだ足りず、うすかったです。「エンピツが持てるようになったら、おはしを持ってみようね」とあなたに伝え、あなたも納得したはずです。
 
ところでそのころ読んでいた育児本に、「お皿に盛ったポテトチップスをおはしで挟む練習がたのしめるので良い」とあったので試したかったのですが、これは一度もやっていません。こんど、やりましょうか
 
まずはエンピツを、親指、ひとさし指、中指の3本でしっかり持つことをあなたに説明しました。あなたはすぐに理解して、これに取り組んでいました。しばらくして、そのエンピツを持つ形のまま、もう1本のエンピツをその下に添えました。「ほら。エンピツを持てるようになれば、次はその形のまますぐにおはしをもてるよ」と伝えました。
 
並行して、同じ2016年10月より学研のドリル『すうじ』を毎日やっていました。数字そのものの練習もそうですが、ドリルの用紙にエンピツで書くことで「運筆力をつける」ことも目標にしていました。
 
こうやって書いていくと、自分が「教育パパ」に見えてきました…。でももちろん、前にも書いた通り、それは「押しつけにならなように」「短い時間にパッとやる」が基本です。あくまで、あなたがあなたの好奇心に従って、いろいろ勉強や練習に励むことができるように気をつけました。
 
あなたはクレヨンも、太いもの、細いものと、何種類か持っていて、画用紙に絵を描いたり、ディズニーの塗り絵をして遊びました。
 
以下、ぼくの記録です。
 
「クレヨンでは正しい持ち方ができるようになってきた」(2017年4月)。
エジソン箸をつかって、箸のもちかたに馴れているところ」(年月不明)。
「色鉛筆を正しい持ち方で持てるようになった! 筆圧もいい感じになってきた」
(2018年1月16日)。
「気づいたら、ふつうにお箸をもって、使っている。エジソン箸は卒業したね」(2019年6月5日)。 
 
エジソン箸は、おはしの持ち方を覚えるためにと考えられた幼児用のおはしです。よい商品があるとお母さんが買ってきたものです。指を引っかけるリングがおはしについていて、はしが落ちないように、二本がつながっています。このエジソン箸を1年半ほど使っていたかもしれません。
 
おはしを持ってがんばるあなた。ときどき、うまくごはんが口に運べなくて、格闘していましたね? そんな姿も、とてもかわいらしかったなあ。 
 

さて、以上、おはしを持つ練習について書いてきました。
でもここまで書いてみて、ぼくは何も特別なことをする必要はなかったかな?と思います。ただ、ちーちゃんの「観察力」に任せてさえおけば、あなたはおはしを自然に持てるようになっただろうという気がします。
 
ちーちゃんの観察する力はすごいです。
これについては後日、書いてみますね。