ちいさな洞窟

娘との日々

水族館

あなたと水族館に行く前のワクワクした気持ちを覚えています。動物園のように、ふだん見慣れない生き物に出合えるたのしみに加えて、演出されたショーや、ときに暗い部屋に入って水槽を見るときの感じが、室内遊園地に入るときのような気分にさせてくれるからだと思います。
 
ちーちゃんにとって水族館はどのような場所ですか? ちょっと「おそる、おそる向かう」という場所ではなかったでしょうか? 「すこし怖いけど、でも行ってみようかな」というような感情があったように思います。たとえば多摩動物園に行くときのように、100パーセント、心から「行くぞ~!」と前向きな気分ではなかったように見えました。
 
それでも、しながわ水族館にはたしか1歳児のころから何度も足を運びました。大井町駅から専用バスに乗って15分。展示の演出を抑えた、わりと素朴な水族館ですが、たくさんの魚が悠々と泳いでいるようで、ぼくはここが好きでした。同じ区内のアクアパーク水族館にもふたりで一度行きましたが、ここは光や音の演出が派手で、大人向けの場所に感じ、少し落ち着かなかったです。そういえばアクアパーク水族館にはメリーゴーランドがあったので乗りましたね。これはとても照明がロマンチックで、この水族館でいちばん楽しかったかもしれません。

あなたのお気に入りは何といってもイルカショーだったはずです。毎回、すごい量の水しぶきを浴びない程度に、なるべく前の席に座りました。イルカたちは皆すばらしいジャンプ力で、空を飛んでいるようでしたね。しながわ水族館ではイルカたちをすぐ近くに見ることができ、泳ぐ速さを体感できました。迫力ありましたね!
 
銀色のイワシや赤いタイが群れをつくってグルグル泳ぐ様子を眺めたり、くつろいでいるアザラシやペンギンたちを眺めたりするのが好きでした。海中トンネル水槽も、たのしみましたね! 海のなかを散歩するような気分にさせてくれるトンネルで、あなたは水中を見上げて、竜宮城にいるようなウミガメや、おかしな顔のかたちのようなエイを、興味深げに、じっくりと眺めました。あなたが赤ちゃんのころ、2歳、3歳、4歳と、このトンネルを通るときの写真が残っているはずです。頭上を悠々と泳いでいるウミガメと一緒に納まった写真はなかなかロマンチックなものです。
 
この水中では、ダイバーの恰好をした飼育員によるエイの餌やりを見学したこともありました。貝を捕食するときのスピードが速すぎて驚きでしたよね。まるで業務用の強力な掃除機で吸い取るように貝を連続で食べていました。
 
さて薄暗い地下階に進もうとすると、あなたの苦手なエリアが近づいてきます。まず出迎えるのはタコ。あなたは水槽に近づこうともしません。そんなに怖かった? タコ。つぎにアマゾンにいるような、いかつい顔をした大型淡水魚の水槽では、半べそをかいて、すぐに通りすぎましたね。このエリアだけ、怖がるあなたを抱っこしたこともあります。ここには、しゃべる樹木(映像です)がいましたし、ときどき雷とともにスコールが降る演出があったので、なおさら怖がってしまいました。でもクラゲは大丈夫でしたね。照明が当たるときれいに輝くクラゲの前で写真を撮りました。
 
展示のさいごは、シロワニという名前の大きなサメでした。ゆっくりとこちらに近づいてくるサメをあなたは怖がって水槽に近づくことができず、毎回、写真が撮れませんでした(一度くらいは撮れたかも?)。たしかに照明がくらくて、サメは非常におっかない顔でした。
 
さて昼食は、水族館の前にある池に浮かぶレストランで食べました。HちゃんやAくんたちお友だちと一緒に水族館で遊んだときも、ここでランチをして、フライドポテトを食べた記憶があります。Hちゃんとはずいぶん小さいころにも(まだ1歳?)、この水族館で遊んだんですよ。ふたりで写った、かわいらしい写真を持っています(現像してアルバムに入っているはずです)。
 
ところで、この水族館は広大な公園の一角にあって、その水族館を出て公園の奥のほうに足を延ばしたこともあります。遊具のある場所では、シーソーをしましたね。ちーちゃんはあれが初めて遊んだシーソーだったかもしれません。その日、そこで遊ぶ子の父親が、自分の子どもに向かって“順番の歌”をうたっているのを見ました。そう、あの「うーたんの つぎは ぐーたん じゅんばんばん じゅんばんばん ぐーたんの つぎは クックー じゅんばんばん じゅんばんばん」です。その歌をうたうことで、子どもに順番を守るように伝えたんですね。できた父親だなあと感心しました。その歌がうたわれるNHK Eテレの番組「いないいないばぁ」は、あなたもビデオをほんとうよく観ていましたね。
 

水族館にはちょっと怖い水槽もあったけど、ワクワクしながら、非日常の世界を楽しむことができました。世界にはたくさんの水族館があるようです。こんど、ぜひ行きましょうよ。