(「『はっけん』 01」からのつづき)
『はっけん』のなかに「青虫はおとなになるとどんな姿になるかな?」という質問があります。この答えを、たぶんエリック・カールの絵本『はらぺこ あおむし』などをとおして、ちーちゃんは知っていました。でも質問を初めて解いたとき、実物の幼虫を見たことはまだなかったと思います。
実物をはじめて見たのは、多摩動物公園のなかにある大きな温室、「昆虫生態園」に行ったときです。生態園の入口のまえに鉄でできた大きなバッタの彫刻が2体ありました。その銀色のバッタに乗って遊んだことは何度もありましたが、この温室の中へは入ることができずにいました。慎重で、怖がりの、ちーちゃんです。
ある日、ちーちゃんは意を決して、ぼくと手をつないで建物の中に入りました。左右に蝶やバッタなどの昆虫が展示された暗い廊下を進むとなんとごきぶりの展示までありました。ちーちゃんの顔が硬直していたような…。
扉をくぐると、そこは天井の高い大きな温室空間でした。ムッとした温かい空気を感じます。ヒラヒラと舞うたくさんの蝶に目を見張りました。こんなにたくさんの蝶を見るのはぼくも初めてです。ちーちゃんはというと……目が点になっていました。目の前のたくさんの蝶たちをどう理解していいのか、脳がフリーズ状態になっていたのでしょうか。
ほんとうにたくさんの蝶が放し飼いになっています。2,000匹もの蝶がいるそうです。カラフルな蝶たちが空中でヒラヒラと舞っており、南国系の植物の幹や葉には、羽を休める蝶がたくさんとまっていました。まるで楽園のようです。
温室内のスロープを下った踊り場に小さなブースがあり、スタッフの方がちょうど解説を始めたところでした。台に置かれた鉢植えには、金色に輝くサナギがいくつも張りついていました。よく見ると、サナギの大きさや色味がそれぞれ違っていて、羽化の段階にあるサナギもありそうでした。また、はっきりとは思い出せないけれど、サナギになりかけた幼虫たちもいたと思います。
ちーちゃんが初めて、蝶の幼虫やサナギを見たのがこのブースです。ブースの後ろのほうで解説を聞き始めました。ぼくはあなたをもっと前の列に行くように促しましたが、あなたはモジモジして前に進み出ようとしません。蝶のサナギを不気味なものに思ったのでしょうね。でも時間が経つと、ほかの子どもたちに交じって、前のほうに進み、鉢植えのサナギを間近で観察することができました。
追記
記録を見ると、「昆虫生態園」に行ったのは2018年2月18日でした。『はっけん』を読んだときは、すでに実物の幼虫を見たことがあったんですね。「昆虫生態園」に行ったのはもっと最近のことかと思っていました。
(「『はっけん』 03」へ、つづく)