ちいさな洞窟

娘との日々

多摩川台公園 02 特別な眺め

多摩川台公園の南のいちばん端にある小山のうえに浅間神社があります。この神社の境内にある展望台をおぼえていますか? ふたりで多摩川に来たときに、ここにもよく足を運びました。

 

石でできた不規則で急な階段を手をつないで登りきると、そこに手水所があり、その左手奥に展望台はあります。ぼくらはまず、まっすぐ本殿に進み「いつもありがとうございます。」と神さまにお参りをしてから、展望台に向かいました。

 

展望台はバスケットコートよりも大きいくらいの広々とした野外スペースです。ここからの景色は、控えめに言っても、最高のものです。景色に奥行きがあり、見えるものは変化に富んでいます。眼下には悠々と流れる多摩川があり、土手にたたずむひとや釣り人、そして川面に集う水鳥を眺めました。川の向こうには武蔵小杉のビル群、以前あなたもいっしょにJリーグを観戦した等々力スタジアム、そして遥かかなたに富士山を見ることができました。空をみれば、雲はみるみると姿かたちを変えていきます。

 

ほんとうに最高のながめで気分のよい場所です。あなたはここに来ると、元気いっぱいに飛び跳ね、前日の雨でできた水溜まりを飛び超えて、奥の手すりまで進み、遠くを眺めましたね。あんなに眺望が開けていて見晴しのよい場所はめったにないでしょ? 

 

そういえばここで一度、きれいな黒アゲハ蝶がひらひらと舞ってきたので写真に収めました。ちーちゃんが初めてアゲハ蝶を間近に見たのはあの日だったかもしれませんね。

 

境内ではときどき、ちーちゃんの石拾いが始まりました。石畳のまわりにザクザクと小石が敷き詰められていて、そこに座って、石を見比べていましたね。どんな基準で石を選んでいたのかな? 

 

身長を測ったりもしました。「たけくらべ」と書かれた石碑がそこにあり、その表面に目盛りが彫ってあります。100センチを超えたのはいつだったでしょうか? いろんな表情とポーズをとるちーちゃんはモデルさんのようでした。ここで撮った写真を使って年賀状もつくりました。

 

まだあなたが2歳のときでしょうか。ここから多摩川の川岸まで降りていって、川面がすぐそこに見えるコンクリートのうえに腰を下ろし休憩したことがあります。きもちのよい風が吹いていたことが思い出されます。クッキーかなにかのお菓子を食べながら、左手に東海道新幹線を望み、右手には東横線目黒線を見ました。ものすごいスピードで走り去る列車が「しんかんせん」だということをこの日、覚えましたね。右手と左手に交互に列車が通るのを、飽きずにふたりで眺めました。さいごのほうは、ぼんやりと列車を眺めて、帰りはあなたを抱えて多摩川駅から電車に乗って帰ったように思います。

 

今日のように、梅雨前のすばらしく晴れた日には、そのときちーちゃんとみた展望台からの眺めや、流れる風の気持ちよい川のほとりの記憶が思い出されます。ぼくにとって大事な大事な記憶です。