ささいなことだけれど、
いま思えば、一つひとつが大事な場面でした。
思い出すのはこんなことです。
居間でふと見ると、あなたは、チャブ台に座って、
ディズニーの番組を見ていたのかも。
ほら、あれ、おもちゃのお医者さんの話。
なんだっけ?
ぼくが見たのは、あなたのピシッと伸びた背筋でした。
とてもよい姿勢で正座していたので覚えているのだと思います。
そのピンとした背中でなら、YouTubeでさえも
見ることは良いことに思えてくるほどでした。
そういえばスマホ動画やビデオは1日30分と決めていましたね。
我が家のルールです。
あなたは15分の番組を2つ見たりして、その約束を守っていました。
はじめのうちは守れなくてすねたときもありましたが、
幼稚園に入ってからは、きちんと約束を守れるようになったのです。
おおばぁば(ぼくのばぁば)から譲りうけたものです。
あなたが歩きはじめたころに、
チャブ台の隅にゴムを貼り付けました。
もし転倒したときに、とがった角で頭をぶたないようにするためです。
(ちーちゃんはあまり転ばなかったけどね。)
そのゴムはいまもそのチャブ台についたまま。
昨日見たら、多少劣化してゴムが割れていました。
こんな場面も思い出します。
ほんの数秒の断片的な記憶ですが、印象に残っています。
そのチャブ台でぼくは朝ごはんを食べています。
あとから起きてきたあなたはまだ気だるく眠そう。
そして、倒れるようにぼくの背中に寄りかかってきました。
布団から出てきたばかりの温い感触がうっすら記憶にあります。
「ねむいよ~」。
そんなことをあなたは言ったかもしれません。
笑顔も思い出します。
どこかの公園でピクニックをしていて、
何かを食べながら、ぼくに向かってにっこり笑ったこと。
野毛山動物園にある爬虫類館の横の急な階段を
手をつないで降りていて、ぼくに向かってにっこり笑ったこと。
お台場の広い道を歩いていて、
なぜだろう、しがみついて、うっすらと笑ったこと。
運動会のとき、客席にいたぼくに向かって、
遠くから「おとうさーん!!」と大きな声で呼んで
にっこりと笑ったこと。
ぼくが駆け寄ると、あなたはぼくの腕をつよく抱きしめました。
ささいなことだけど、
ぼくにとっては、とても大事な記憶です。