ちーちゃんが2歳になる前に始めたパパ床屋。2~3週間に一回、お風呂場で、あなたの前髪をカットするのが習慣でした。自分のものではない髪を切った経験がないこともあり、髪を切るという一連の「作業」に不思議な感触をえて、それまで感じたことのない楽しさを味わいました。
同じように、あなたの爪を切ることも、おもしろかったですよ。爪切りで切るのを、あなたはこわがっていました。「だいじょうぶ?」なんて聞いてきましたね。ちなみにお母さんはあなたの爪を専用のハサミで切っていました。
髪を切るのはいつも5分間ほど。これは、こわがることもなく、切り終わるのをジッと待っていましたね。あなたを焦らさないように、パパパッ、サササッと切るようにしました。
ちーちゃんの前髪はいわゆる「ぱっつん前髪」にしました。そろえて切った前髪は、とても似合っていました。毎回、かわいいなあと思いながら切ったものです。
ときどき、前髪が斜めになってしまったこともありますが、逆にオシャレな雰囲気になって、これも似合っていました。ただ、斜めになりすぎてしまい、そろえるためになお切っていくうちに、切りすぎてしまったことがあります。
前髪がだいぶ短くなってしまった、ちーちゃん。「たしか、こんな前髪の女優がいたっけ?」と思いながら、ぼく自身は納得していました(その女優は蒼井優です)。短すぎたけど、それでも似合っていましたよ。ちーちゃんもその短すぎる前髪を特に気にしていなかったはずです。
パパ床屋が終わると、ちーちゃんは、いつも、切られて床に落ちた黒い髪のかたまりを、不思議な物体を見るように眺めていました。