ちーちゃんが生まれて間もないころ、
お母さんとふたりで、おもしろがっていたことがあります。
それは、あなたの泣き声です。
あなたは「おんぎゃあ」と泣いていました。
赤ちゃんだから「おんぎゃあ」と泣くのは当たり前なんですが、
あなたはちょっと違っていました。
まさに「おんぎゃあ」と泣くのです。
それまで、赤ちゃんの泣き声というのは、
文字にしづらいものにあえて文字をあてている感じだと思っていました。
フンギャア、ギュフギュフ、フンフン、ズーズー、等など。
文字にできない泣き声を、字にするとこうなる、
というものだと思っていたのです。
たとえるなら、ニワトリの鳴き声は「コケコッコー」ですが、
英語ではクックドゥードゥルドゥー(cock-a-doodle-doo)です。
文化によって、聞こえ方、表し方もちがってきます。
音声がまずあって、それに文字を後付けしているということなのだと思います。
でも、ちーちゃんは、まさに「おんぎゃあ」と泣いていました。
あなたの泣き声は、誰が聞いても、「おんぎゃあ」以外ではなかったと思います。
もし外国人なら「on-gya-a」と聞こえたでしょう。
まるで原稿を読むように、まるで文字をなぞるように、
力づよく「おんぎゃあ!」と泣くあなたをみて、
お母さんといっしょに笑っていました(失礼!)。
おもしろいと思うと同時に、たくましくも感じたものです。